unfakeアーカイブ

記憶というものは曖昧で、留めておきたいと思えば思う物事ほど、どんどん海馬から無くなっていく。どの電車に乗っただとか、何を見たとか、自分がその時つけてた香水の香りだとか。そんなレモンみたいなことばかりが鮮明で、肝心なことを覚えてない。「留めておこう」と意識することで、逆に記憶する機能を遮ってしまうとしたら、私の脳味噌はあの人のことをほとんど記録していないんだろう。もうちょっとメモリを積んでおけば良かったと今更ながら思う。

あの夏以来、思い出そうとすればするほど残っている僅かな記憶が消えてしまうみたいで、無理に思い出す作業をあえて止めてた。

東京、雑踏、ミッション車、赤い携帯、華奢な体。思い出せるのはそれだけ。本当はどこかに残っているであろうたくさんの要因には、あえてベクトルを向けない。怖いから。

記憶というものは曖昧で、留めておきたいと思えば思う物事ほど、どんどん海馬から無くなっていく。大事なデフォルトの記憶に理想を重ねたり、思い違いからデフォルメしたり。そういう作業で何かを失ってしまうのは真っ平御免だ。
忘れるということは、物凄く怖い。

unfakeログ 2005/05/24 ラズードックス